控除について

Q.事業者が仕入税額控除を受けるためには帳簿を保存しなければならないそうですが、その記載内容はどのようなものであればいいですか?

A.簡易課税制度を利用しない事業者が仕入税額控除の適用を受けるために保存するべき帳簿について、その記載内容は次のように取り扱われます。
 なお、仕入税額控除の適用を受けるには、課税仕入れの事実を記した帳簿を保存する必要があるほか、請求書、領収書、納品書といった取引の事実を証明する書類も併せて保存しなければなりません。

1.請求書等の記載内容と帳簿の記載内容の対応関係
 請求書等に記されている課税仕入れに関わる資産か役務の内容が一品ごとの詳しいもの(例えば、鮮魚店については「さば○匹、さんま○匹…」等の記載)でも、帳簿には商品の一般的な総称でひとまとめに記すというように、申告に当たり請求書等を個別に確認せずに仕入控除税額の算出が可能である程度に記してあればいいことになっています。
 ただ、課税商品と非課税商品が存在するのであれば、分けて記さなければなりません。

2.一度の取引における2種類以上の商品の購入
 一度の取引において、複数の一般的な総称の商品を2種類以上購入しても、例えば建設会社が飲料と文房具を購入した場合等、それが経費に属する課税仕入れであるならば、課税仕入れに関わる資産か役務の内容として、「文房具等」、「文房具ほか」と記してあればいいことになっています。
ただ、課税商品と非課税商品が存在するのであれば、分けて記さなければなりません。

3.一定期間における取引
 課税期間のうちの一定期間における取引につき請求書等をまとめて作成するのであれば、その請求書等に記すべき課税仕入れの年月日は、その一定期間でいいことになっています。
 継続的に供給されるもの(水道水、電気、ガス等)で、一定期間ごとに供給量を検針した結果に応じて料金を請求するという取引がこれに当てはまりますが、そのような取引に関わる請求書等を基に帳簿を作成するのであれば、課税仕入れの年月日についても同様の記載で構いません。
 また、例えば、同じ商品(一般的な総称による区分が同じになるもの)を一定期間に2度以上購入していて、その一定期間分の請求書等に一回ごとの取引の明細が記されているか添えられているのであれば、帳簿を記す際に、課税仕入れの年月日をその一定期間とし、取引金額についてもその請求書等の合計額を記して構いません。
 ちなみに、一定期間については「○月分」と記してもいいことになっています。

4.帳簿に記すべき名称か氏名
 帳簿には、課税仕入れの相手方の名称か氏名を記す必要があります。したがって、原則として、法人については「株式会社田中商店」等、個人事業者については「佐藤一郎」等と記すことになっています。
 ただ、正式な名称か氏名、それらの略称が記されている取引先名簿が備え付けられていること等によって課税仕入れの相手方を特定できる状況にあるならば、「田中商店」、「佐藤」といった記載でもいいとされています。
 また、フランチャイズのコンビニエンスストアについては「ABチェーン中野店」、飲食店については「渋谷食堂」といった屋号等による記載でも、電話番号が明確であること等によって課税仕入れの相手方を特定できるのであれば、そのような記載でいいとされています。

5.伝票会計の場合における帳簿の保存
 いわゆる伝票会計における伝票で消費税法第30条第8項各号(仕入税額控除に係る帳簿の記載事項)に定められた事項を記したものは課税仕入れをした事業者が自らその事実を記録したものですので、日付別、勘定科目別にこの伝票の整理を行い、これに日計表、月計表といったものを加えた伝票綴りは同項に定められた「帳簿」に当てはまります。
 それゆえ、その伝票綴りを保存するのであれば、仕入税額控除の条件としての「帳簿の保存」がなされているものとして扱われることになります。
 ただ、仕入税額控除を受けるためには、本来の「帳簿」を保存している場合と同様に、別途課税仕入れの相手方より交付された請求書等の保存が必要です。

6.帳簿代用書類の保存
 法人税法においては、法定事項を帳簿に記す代わりに、それらの記載事項の全部か一部が記されている取引関係書類を整理、保存すること(帳簿代用書類)が認められています。しかし、この帳簿代用書類は、消費税法第30条第8項(仕入れに係る消費税額の控除)に掲げる帳簿として取り扱われるわけではありません。
 それゆえ、帳簿代用書類が保存されていても、消費税の仕入税額控除のための帳簿については、記すべき事項の全部か一部が欠落していますので、「帳簿及び請求書等の保存」がなされているとは判断されません。
 ただし、帳簿代用書類のうちで課税仕入れの相手方より受領したものは「請求書等」に当てはまるのが一般的ですので、申告に当たってその書類を個別に確認せずに仕入控除税額を算出できる程度に課税仕入れに関わる法定事項が帳簿に記載されているのであれば、その書類と帳簿を保存することによって仕入税額控除の条件に該当するといえます。

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