新会社法を確認する

Q.役員賞与の取扱いについて教えてください。

A.会社法ができる前は、役員賞与は通常、利益処分により支給され、この利益処分は定時株主総会の決議事項とされていました。
 一方、会社法においては、利益の処分又は損失の処理に関する議案が廃止され、剰余金の配当、準備金の増減や剰余金の処分というふうに、個別の議案として決議されることになっています。
 会社法では、期末の利益処分という考え方がなくなったことから、利益処分による役員賞与というものがなくなりました。株主総会の決議を経ることにより、期中随時に役員賞与を支給することも可能です。1年間いくらの範囲内でという限度額の決議でも、その都度の個別の決議でも構いません。
 また、会社法においては、役員賞与を、役員報酬と同様に、職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として扱うと明文化されています。それゆえ、役員賞与についても、役員報酬等に係る議案として、株主総会で決議されるのが通常です。

 役員賞与の会計処理も変わりました。会社法ができる前は、役員賞与については、費用処理をする方法と、利益処分として処理する方法がありました。
 一方、会社法の下では、発生時に費用として処理する方法に統一され、利益処分として会計処理を行うことは認められていません。そもそも、当期未処分利益という勘定科目は廃止されましたので、当期未処分利益から役員賞与に振り替えることは不可能となりました。役員賞与の支給は株主総会の決議が前提となりますので、当期に係る役員賞与を当期末後に開催される定時株主総会で決議する場合は、当期の費用として引当金に計上することとされています。なお、平成17年11月に企業会計基準委員会が公表した「役員賞与に関する会計基準」に、役員賞与につき発生時の費用処理とすることが定められています。
 また、中間決算での役員賞与の会計処理については、原則として引当金計上を行いますが、役員賞与の金額が事業年度の業績等に基づき算定されることになっているため中間決算で合理的に見積もることが困難な場合等には、費用処理しないことが認められています。
ちなみに、会社法ができる前は、役員賞与は利益処分として当期未処分利益で処理していましたが、会社法の下では費用処理されるようになりましたので、損益計算書に計上される利益の金額は、役員賞与の分だけ少なく表示されることとなりました。

 役員賞与の税務上の取扱いについては、役員賞与は原則として損金不算入ですが、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づき支給するものや、非同族会社の業務執行役員に対する役員賞与で一定のものは、損金算入が認められています。

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