A.旧商法においては、原則として、株式会社は株券を発行することとされていました。ただし、定款に定め、かつ、その旨を登記することによって、株券を発行しないことも認められていました。このような会社を株券廃止会社と呼び、非公開会社については株券廃止会社ではない場合にも株主から請求があるまでは株券の発行を行わなくても構いませんでした。
一方、会社法においては、反対に、原則として、株券を発行しないこととなりました。そして、株券を発行する旨の規定が定款にあり、かつ、その旨が登記されている場合に限り、株券の発行が可能となりました。このような会社を、それ以前とは反対に、株券発行会社と呼ぶことになっています。なお、非公開会社については、株券発行会社である場合にも、株主から請求があるまでは株券の発行を行わなくても構いません。
旧商法の下で定款に株券を発行しない旨の規定がない会社(株券廃止会社ではない会社)は、会社法の施行後は、定款に株券を発行する旨の規定がある会社(株券発行会社)として扱われることになりました。すなわち、定款に何も記載されていないにもかかわらず、法律上は、株券を発行するという定めがある会社とみなされるになったのです。
したがって、このような会社については、会社法施行前に定款に規定を設けて登記を行い、株券廃止会社になってしまうか、会社法施行後に定款を変更して現実には定款に記載されていない規定を抹消し、登記も抹消手続をとるかの選択を迫られることとなりました。
また、上場会社については、株式等決済合理化法の施行日に、一斉に株券を廃止し、振替制度に移行しました。