A.会社は、株主総会で議決権を行使する株主を確定すること等を目的に、基準日を設定することが可能です。そして、株主総会で議決権を行使する株主を確定することを目的に基準日を設定する場合、その基準日において株主名簿に記されている株主が、その株主総会で議決権を行使することができるということになります。
多くの会社は3月決算で、株主総会を開催するのは通常6月です。そして、一般的には、株主総会に招集する株主を特定できないと困ることから、基準日を設け、3月末において株主である人を株主とみなして招集通知の発送を行い、株主総会で議決権を行使してもらいます。とりわけ、上場会社については、このような規定を定めている会社が多いといえます。
旧商法の下では、その基準日後に株主となった人は、その株主総会で議決権を行使することができませんでした。したがって、基準日直後に合併等が行われたことで株主となった人は、その後に開かれる株主総会において議決権を行使できないといった不都合なことがありました。
例えば、3月決算で、6月に株主総会を開催する会社において、4月1日から株主総会までの間に合併か増資がなされ、株主が増加した場合、新たに株主となった人は、直後の株主総会で議決権を行使できないということになります。なぜなら、3月末の時点では株主ではなかったからです。
そこで、会社法においては、議決権に関する基準日が設定されていても、会社の判断によって、基準日後に株主となった人の全部か一部を、議決権を行使できる人と定めることができるとされました。定款によって基準日を定めているのであれば、基準日後に発行されたか処分された株式を取得した人に対して議決権を付与することができる旨の規定を追加しなければなりません。
ただし、基準日において株主であった人の議決権を害することはできないとされています。すなわち、基準日において株主であった人の議決権を剥奪することはできません。ゆえに、基準日後に株式を譲り受けた人(売買によって株式を取得した人)を、議決権を行使できる人とすることは、通常認められていません。ただし、基準日後に自己株式の処分によって発行会社から株式を譲り受けた人については、議決権を行使できる人としても構いません。なぜなら、発行会社が所有している自己株式には議決権がないからです。