医療

医療法人の関係法令が分からない。

私は10年前の設立以降、理事を務めている医療法人において、このたび配当金を出そうかと考えた。この医療法人は、今期の中間決算でかなりの利益を出した。本決算も昨年の数倍の利益を出すことが見込まれていて、好調ぶりはこれからも続きそうだ。なので、出資者に配当を出し、お礼をしたいと思ったのだ。ところが税理士に問い合わせたところ、配当を出すことはできないと言われてしまった。

失敗のポイント
医療法人を考える上で重要となるのは、『医療法』『医療法施行令』『医療法施行規則』だ。
 営利のために病院や診療所を開設することはできない。なぜなら、医療法は医療を提供する体制の確保し、国民の健康の保持するために制定されたからだ。この目的から外れて、剰余金も分配できない。

※補足として、配当金は、株式会社の場合に、株主が企業などの出した利益の一部を、株主の有する株式数に応じて得る分配金であることを提示しておきたい。この配当金は、投資信託や特定受益証券発行信託の収益分配も含まれる。

正しい対応
 医療法人は公益法人とは異なるが、医療に関する公益性を有する事業を行うことを目的としている。とはいえ剰余金の分配が否定されているので営利法人ともなれないから、会社法における会社とも異なる。だが決算は営利法人等のそれと同様の手順を踏む。営利法人ではないため、利潤が生まれても、出資者に還元することは禁じられている。医療法人の設立に際してはこれらの事項に注意が要する。

[税法等の解説]
医療法人の関係法令
医療法第54条 剰余金の配当禁止
医療法人は、剰余金の配当が禁止される。

医療法第54条 [剰余金の配当禁止]
 剰余金は、施設設備を整えたり、法人スタッフの処遇の改善に使う他は、預金あるいは国公債費等元本保証のある資産として医療の充実のために備えておかなければならない。医療法人は剰余金を出資者に配当することが認められていない。また、事実上分配であるとされると、配当でなくともその行為は禁じられる。
 
事実上の利益分配と見なされる行為の例
・役員、社員、およびこれらの者の親族(以上「役員等」)が、正当な根拠なく医療法人から資産を借りうけてしまうこと。
・役員等、MS法人がその資産を医療法人に著しく高い金額で貸し付けてしまうこと。
・著しく高く、またその算定基準・支払根拠があいまいな額の退職金が役職員に支払われてしまうこと
・役職員に支払われる給与および役員報酬が、勤務実績を鑑みると著しく高い額となってしまうこと。
・自らのものでない債務の保証を医療法人が行ってしまうこと。
・役員等をはじめとした他人名義の債務を医療法人債務へ変えてしまうこと。

ご自身の医療法人で行っている行為が事実上の利益分配となっていないか確認していただきたい。都道府県庁も医療法人による剰余金配当の取り締まりを強化中だ。医療法人が剰余金の配当や事実上の利益分配行為を行った場合、法人理事または監事は20万円以下の罰金を支払う(医療法第76条第5項による)。

医療法

 医療法は昭和23年に、医療を提供する体制を確保し、国民の健康の保持に寄与するために制定された。医療法によれば、営利目的の病院・診療所開設は認められていない。また配当をすることも認められていない。この医療法をはじめとして、医療法人の根拠法令は、医療法、医療法施行令、医療法施行規則の3つだ。
 さまざまな規制がある中なぜ医療事業の経営主体を法人化するのか?その理由は、資金集めを円滑に進め、経営を安定させることで、私人が医療事業を行いやすくすることにある。

医療法人の非営利性
 医療法人には公共性のある医療事業の展開が求められているが、公益法人ではない。剰余金の配当もできないため、営利法人でもない。つまり、株式会社とも異なる。

税理士からのPOINT!
 剰余金の活用の用途を様々に検討してみよう。 使い道は制限が多いが、設備の拡充や、スタッフの処遇改善などには用いることができる。

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