A.旧商法においては、会社が自己株式を任意に取得する場合、原則として、定時株主総会の決議を経る必要がありました。
一方、会社法においては、株式会社は、いつでも、株主総会の決議によって自己株式を取得できるとされ、臨時株主総会の決議でも構わなくなりました。特定の株主を対象に自己株式を取得する場合は、原則として特別決議が必要であり、他の株主につき売主追加の議案変更請求を認めなければなりません。
取締役会設置会社における自己株式の取得手続の概要は、次の通りとされています。
1.相対取引による取得
市場を通さずに1対1で売買する取引のことを、相対取引といいます。
(1)全ての株主を対象
決議方法は株主総会の普通決議となります。あらかじめ、株主総会において、取得する株式の総数・種類・総額、取得期間(1年以内)を決定します。そして、取得しようとする都度、取締役会において、取得する株式の数・種類、1株当たりの取得価額とその総額、申込期日を決定し、全ての株主に、各事項を通知します(公開会社については公告で構いません)。申込株式の総数が取得する株式の総数を超過する場合には、平等に按分して取得します。
なお、取締役の任期が1年であること等、一定の要件を満たす場合、定款に定めることによって、決議方法は株主総会の普通決議ではなく取締役会の決議となります。
(2)特定の株主を対象
ア.子会社からの取得
決議方法は取締役会の決議となります。
イ.市場価格のある株式を市場価格以下で取得
決議方法は株主総会の特別決議となります。
ウ.非公開会社が株主の一般承継人(相続人等)からその株式を取得
決議方法は株主総会の特別決議となります。なお、その一般承継人(相続人等)が、承継した株式について株主総会において議決権を行使する前に、買い取る必要があります。
エ.上記ア~ウ以外の取得
決議方法は株主総会の特別決議となり、他の株主については売主追加の議案変更請求を認める必要があります。この結果として、申込株式の総数が取得する株式の総数を超過する場合には、平等に按分して取得します。
なお、定款によって売主追加請求権を排除することは可能ですが、定款を変更(廃止を除きます)するためには、株主全員の同意が必要となります。その同意が得られるのであれば、あらかじめ定款に定めを設けておくことによって、自己株式を取得しやすくなるといえるでしょう。
2.市場取引や公開買付けによる取得(上場会社の場合)
(1)定款に定めがある場合
決議方法は取締役会の決議となります。
(2)定款に定めがない場合
決議方法は株主総会の普通決議となります。