A.経営の結果がどうなったかということより、経営を判断する過程できちんとした手続きをとっていたか否かということが、その経営者の責任になるという考え方を、経営判断の原則といいます。司法の判断においても支持されている考え方であるようです。例えば、役員会にかけることなく、勝手に経営者が行って多額の利益が出たとしても、内部統制違反になります。一方、適正に内部統制を行い、所定の手続きをとって損をしたとしても、本人の責任にはならないということになります。
したがって、「内部統制をきちんと行うこと」自体が、経営者を守ることにもなるといえます。特にオーナー企業にとっては、自身を守るためにも内部統制が必要であると考えることが重要です。
アメリカでは性悪説に立って経営しているのに対し、日本には性善説が根付いています。「うちにいるのはいい従業員ばかりで、従業員を信頼している。必要ないので、一文にもならない内部統制はできない」という経営者は少なくありません。
実際にそうかもしれませんし、性善説に立つ方が何もしなくていいのでコストを抑えられます。1980年代まではとてもいいとされていた仕組みが、1990年代に入ってリストラによって崩壊しました。会社が終身雇用を採用していたときには従業員の会社への帰属意識が強く、忠誠心も高かったのですが、人材が流動化した現在においてはこのような崩壊は必然といえるでしょう。
また、日本には、あうんの呼吸というものがあり、恥の文化が存在します。アメリカとはカルチャーが違いますので、経営者がしっかりした覚悟を持って行わなければ、頭だけはアメリカの性善説、体は日本の性善説という、どっちつかずの状況になる危険性があります。「頭では分かっていても、なかなかおなかに落ちてこない」のが人間の属性ですが、ケガをする前にできるだけ早く実行に移すことが重要です。