A.日本版SOX法において、文書化が重要です。文書化というのは、「共通言語」を作ることです。ISOを導入している会社は考え方が同じですので理解しやすいと思われます。日本版SOX法の「実施基準」は、ある意味でISOの「規格要求事項」に該当します。
やみくもに文書化すると、保存文書が膨大になってしまい、どこに文書が保管されているのか不明になりかねません。同じ価値観を持たせて、それをグローバル基準に合わせ、そういうものを集積したベストプラクティス(最適事例)が文書化であるといえます。
日本版SOX法はいわばアメリカからの輸入商品ですが、アメリカにはアメリカ人は少なく、会社には英語を話せない従業員も存在します。したがって、共通言語を話すには、文書化が欠かせません。
一方、日本の会社では、日本語を話す人だけが存在することが多く、アメリカにおける文書化とは基本が同じであれば方法には違いがあってもいいのではないのでしょうか。これまでの日本のカルチャーとは異なることに取り組まなければならないという大変さがある上に、アメリカのものをそのまま直訳してもうまくいかない面もあるでしょう。そのようなことを考慮すると、文書化は最小限でできると思われます。
文書化は、日本のカルチャーにはありませんが、とても重要であるということは歴史が証明してくれます。幕末の薩長連盟の成立が明治維新につながったのですが、水と油の関係であった薩摩藩と長州藩による薩長連盟が坂本竜馬の立会いの下でうまくいったのは、文書化したからであり、もし口頭であったならうまくいかなかっただろうといわれています。
現代のようなグローバルな時代においては、文書化の重要性は増しています。例えば、移転価格税制についても、海外子会社との取引価格の税金であることから海外との交渉ごとが絡んできますので、文書化しなければ後になってトラブルが発生するのは避けられないということになります。