A.次のような流れで文書化作業が展開されていくのが一般的であると思われます。
プロジェクト編成・企画
↓
全社的な内部統制の評価
↓
文書化の対応方針の決定
↓
パイロット文書化
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文書化作業の全社展開
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運用状況の評価
↓
不備への対応・欠陥の是正
上記のような流れについては、次の三つのポイントが存在します。
一番目に、日本版SOX法への対応は、トップマネジメントのリーダーシップを要する全社的なプロジェクトといえます。社員の協力が得られなければ成功しません。現場に赴いてテストやインタビューを行う作業が多いことから、現場が忙しいので来ないでほしいといわれたら、スケジュールが滞ってしまいます。このような意味で、トップマネジメントのリーダーシップは、プロジェクトを遂行する上で、極めて大切です。
二番目に、監査人との意見交換や調整が重要です。文書化作業を終えてから監査人にだめだといわれるという最悪の事態を避けるためには、要所ごとに監査人と確認作業を行う必要があります。
三番目に、外部コンサルタントが必要であるといえるでしょう。文書化作業に関して、ガイダンスやセミナーで詳細な説明をしても、最初からきちんとしたものを作成することは困難です。外部コンサルタントは通常パイロット文書化をします。この文書化の見本をまねて、以後の文書化作業を全社展開していきます。この見本のないまま文書を作成することは、非常に難しいと思われます。また、パイロット文書の質によって、あらゆる作業の質に影響が生じることになります。したがって、外部の専門家に依頼して、その方法を学ぶというアプローチが合理的であると考えます。費用面を考えると、全てを外部コンサルタントに依存するよりも、外部に依存する部分と自力でできる部分を見極めるといいと思われます。少なくともパイロット文書化は、外部に依頼するのが効果的で効率的ではないでしょうか。
上記のような流れで文書化作業が展開されていくことになりますが、各準備事項にどの程度の期間を要するのかについて具体例を述べます。なお、期間をクォーターごとに区切ります。
プロジェクト編成・企画:直前々事業年度の1Qに着手・完成
全社的な内部統制の評価:直前々事業年度の1Qに着手、同事業年度の2Qに完成
文書化の対応方針の決定:直前々事業年度の1Qに着手、同事業年度の2Qに完成
パイロット文書化:直前々事業年度の3Qに実施
文書化作業の全社展開(整備状況の評価):直前々事業年度の3Qに着手、同事業年度の4Qと直前事業年度の1Qに実施
運用状況の評価(セルフ アセスメント・テスティング):直前事業年度の1Qと同事業年度の2Qに実
施
不備への対応・欠陥の是正:直前事業年度の1Qから3Qまでに対応、同事業年度の4Qに完成
上記準備時事項のうちで最も時間を要すると思われるのは、「文書化作業の全社展開」です。上記のスケジュールでは、全てが終了するまでに2年間を要するということになります。2年間というのは長いように感じられるかもしれませんが、日常業務をしている中では現場に対するインタビューもスムーズな進行は困難であるのが一般的です。どうにかして都合をつけてもらうことができてインタビューをしても、後に文書にまとめようとした際に不明確なところが多く見つかるものです。インタビューをした相手に対して、メールでそのようなところについて確認したり、場合によっては再びインタビューをお願いしたりするのが実情ですので、2年間というのは実際には長いとはいえないでしょう。想定以上に時間を要してしまう可能性もありますので、文書化を始めるのは、なるべく早い時期にした方がいいと思われます。